
平成22(2010)年3月4日
柳ヶ瀬 裕文(大田区)
*本文は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干の変更があることがあります。 正確には議事録をご参照ください。
児童虐待対策について、医療について、特別支援学校について、築地市場について順次質問をさせて頂きます。
今年の一月、江戸川区で小学校1年生の岡本海渡君が両親からの暴行によって亡くなりました。私も8歳の子供をもつ一人の親として、このような事件をみると、胸がしめつけられる思いです。今後このような事件が繰り返されないように東京都がとるべき施策について質問をして参りたいと思います。
昨年の9月、海渡君が通っていた歯科医が、左ほほと両ももにあざを見つけ、子ども家庭支援センターに通報。同センターはその日、学校長に連絡。二日後に家庭訪問した際、父は「二度と手をあげない」と約束をしたそうです。報告を受けたセンターは「緊急性はない」と判断。センターから文書報告を受けた墨田児童相談所も「解決済み」と認識していたとのこと。10月にはいって、海渡君が都立墨東病院に入院。診断は「急性硬膜下血腫」で特に病院からの届出等はありませんでした。12月から学校を欠席がちになり、1月の23日に最後の暴行を受け、病院へ搬送。24日に亡くなりました。
ここで、どうしたらこの虐待に的確に対処できたのか考えて見ますと、まず第一に子ども家庭支援センターの専門性に課題があります。児童福祉法の改正で区市町村が虐待通告の窓口的な役割を担うようになりました。子ども家庭センターは、さまざまなところから集まってくる通告を受けて、その事例は緊急性や困難度が高いのかどうかを検討し、児相に支援を求めるかどうか決めます。しかしこの作業はさまざまな要因があり、非常に難しい判断を伴うものだと思います。現状の子ども家庭支援センターには、虐待の専門家が配置されているわけでもなく、能力的にこの重要な役割を担いきれていないのではないか、そのように心配をしています。今回の海渡君の件では、歯科医が気づくほどの傷があり、母親の若さや、子どもと同居して間もないなどリスクが重なっていることを考えると、「緊急性はない」と判断した子ども家庭センターも、その報告を鵜呑みにした児相にも問題があります。
そこで質問ですが、東京都は子ども家庭支援センターの専門性を高めるためにあらゆる施策を講じるべきと考えますが、いかがでしょうか。
例えば、いま児童相談所では3つの区から職員が派遣されてきています。この職員は児相の職員といっしょになって1年程度事案に取り組み、ある程度の能力を習得して、センターに帰っていき、センターはその職員を中心に運営していくというものです。
短期の研修では、複雑困難な虐待事例に対処する能力をつけることは難しいでしょう。このような長期間の研修を可能にする、また区市町村が職員を派遣しやすくする仕組みづくりが必要と考えますが、所見をお伺いいたします。●1
また、児童相談所も子ども家庭支援センターがまだ未成熟であるという認識にたち、支援の要請ではなく、報告であったとしてもその事例によっては積極的にフォローしていくことが重要だと考えますが、見解をお伺いいたします。●2
第2に医療機関側の意識が課題です。平成20年に実施した「都内病院の児童虐待対応の実態調査」によれば、児童虐待対応のための具体的な取り組みを実施していると回答した病院は、約2割程度でした。つまり8割は特に何もしていないということですね。また平成17年に埼玉県が実施した「医療機関向け児童虐待実態調査」によれば小児科医の約4割が虐待の通告に抵抗感をもっているということがわかりました。また「虐待」を発見後、関係機関に通告・連絡を取ったのは小児科で約5割にすぎません。「判断に自信がもてない」というのが主な理由ですが、少数回答ではありますが「トラブルに巻き込まれたくない」といった回答もあったようです。これは本音なのではないでしょうか?さまざまな理不尽な要求をするモンスターペイシェントも問題化するなかで、虐待の可能性を発見しても親とのトラブルを恐れ通告に躊躇してしまうことがあるのではないかと考えます。今回の海渡君の件では、亡くなる3ヶ月前に都立墨東病院に入院していますが、「急性硬膜下血腫」という虐待によく見られる診断でありながら、なんらの通告もなされませんでした。
そこで、医療機関の虐待に対する意識の向上への取り組みが必要だと考えますが、いかがでしょうか?また、医師が通報をためらうことがないように、例えばある特定の所見が見られる場合には、組織として検討がなされるようなシステムづくりを後押しするべきだと考えますが、所見をお伺いいたします。●3
また、根本的な問題として児童相談所のマンパワー不足があります。私も品川児童相談所を視察してきましたが、職員一人で100件以上のケースを担当するなど、大きな負担となっています。職員の増員が望まれることはいうまでもありませんが、現場で頑張っている職員が困難な事例に疲弊し、バーンアウトしないような取組が重要だと考えますが、見解をお伺いいたします。●4
多くの子どもたちが虐待で亡くなっていきました。報告されている事例は氷山の一角であるともいわれています。ひとりひとりの事例から、現状からの改善策を考えていくことが私たちの責務だと考えます。都が今後も児童虐待対策に真摯に取り組むことを切望して次の質問に移ります。●5
新型インフルエンザ対策について質問します。10月29日の厚生委員会の質疑において今回の新型インフルエンザでは小児患者の重症化が問題であると指摘をさせて頂きました。また質疑のなかで国が推計しているピーク時の小児重症患者153名に対して、都内医療機関の受け入れ可能なベッド数が65名と圧倒的に不足している状況が判明しました。しかし都は、受け入れできる病院数を増やすため、さらなる要請を行うと答弁していながら、10月から今日までなんら結果を残していないということが明らかになっています。結果としては、その後、小児重症患者もゆるやかに推移し大事に至らなかったわけですが、もし国の推計通りに患者が発生した場合、受け入れ医療機関がなくたらいまわしになり、死亡するということが起きてもおかしくない状況だったと考えます。問題のポイントは都と病院の関係です。今回の小児重症患者の受け入れ要請では、小児入院ベッドをもつ85の病院に対してお願いをし、46の病院に断られている。その断った病院のなかには、小児の休日・全夜間診療事業を実施していて、救急患者は原則受け入れなくてはならないという条件となっている病院が9つもあるのです。都はベッド数が圧倒的に不足するという緊急事態においても要請を断られ、「各病院にも事情があるから仕方がない」「患者が増えたら更に要請を行う」と答弁をしています。今回は「弱毒性」の豚インフルエンザでしたから、このような緩慢な対策でもしのげたかもしれませんが、もし「強毒性」の鳥インフルエンザだったらと考えずにおれません。そこで質問ですが、東京都は今回のインフルエンザを経験して何を学び、その教訓を今後どのようにいかしていくのか、お伺いします。●1
また「強毒性」の鳥インフルエンザが発生した場合、医療提供体制の確保のためにどのように都内医療機関をコントロールしていくのか、所見をお伺いします。●2
次に特別支援教育について質問します。私の自宅のすぐ近くには矢口特別支援学校がありますが、入学する子どもの増加によって教室不足になり、劣悪な教育環境を強いられています。図書室・パソコン室などの特別教室はなくなり、普通教室は、教室をカーテンで仕切り二つの教室として使用しています。また子供たちが履き替える靴箱の場所さえ確保ができないほどの状況です。こうした状況は、他の特別支援学校においても同様な状況があると聞いています。これから特別支援教育推進計画の第三次計画を策定するとのことですが、知的障害のある児童生徒が増加している現状を踏まえ、子どもたちの教育環境を確保していく効果的な対応策を講じていく必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。●1
最後に築地市場の移転問題について伺います。私は昨年12月18日に行われた「築地市場の移転・再整備に関する特別委員会」において、築地市場の現在地再整備に関して、晴海仮移転案などについて、質問してきました。
その時の東京都の答弁は、極めて冷たいものでしたが、その後、2月に「21世紀・築地プロジェクト」という団体が、晴海の都有地を活用した3つの現在地再整備案を示したこともあり、改めて、晴海地域の現状について伺いたいと思います。
特別委員会で、晴海の敷地の中で仮移転先として使用できるスペースについて質問した際に、東京都は「晴海の都有地には埠頭や公園、道路があるために約15ヘクタールを想定している」と答えていました。しかし、私たちが再三、オリンピックの例を出していたように、その気になれば、大きな敷地を晴海において確保できるはずです。
そこで、3月末をもって消滅してしまう前に東京オリンピック・パラリンピック招致本部から答弁を求めておきたいと思いますが、立候補ファイル概要版の平面図でも確認できるように、2016年のオリンピック・メインスタジアムの建設にあったっては、道路の付け替えを想定していたのか。また、公園や埠頭のなかに、サブ・グラウンドなど、施設の一部が建設されることも想定していたのか、見解を伺います。●1
また、「21世紀・築地プロジェクト」の具体案の中には、晴海に隣接する豊海地区の冷蔵庫群との連携が可能になるとの提案がありました。豊海地区についていろいろ調べてみましたら、東京都民に新鮮な水産物を円滑に供給するとの構想のもとにはじまった(財団法人)東京水産振興会という団体があることが分かりました。当財団は、東京都の監理団体でも、報告団体でもありませんが、理事には、東京都の港湾局長や産業労働局長、中央卸売市場長、東京都の元副知事などが名を連ねており、隣接する築地市場との連携や都民に対する水産物の提供に関して、東京都がどの程度把握しているのかが気になるところです。
当財団の事業として、豊海埠頭を水産関係19社に分割貸し付けし、各社は、冷蔵倉庫、水産物配送等の施設用地として利用しているとこのことですが、東京都は、豊洲地区の冷蔵倉庫の利用状況や取扱量、あるいは、築地市場との連携について、実態を把握しているのか。把握していれば、それらの実態について見解を伺います。●2
築地市場に関してはもともと全ての関係者の合意で、現在地再整備を進めていました。それがとん挫した最大の理由は、工事に必要な種地を確保できなかったからではないでしょうか。当時、仮移転先は汐留の国鉄用地を予定したが借地料などの交渉がまとまらず断念した経緯があります。
移転予定地であった豊洲に除去できるかどうかわからない土壌汚染がみつかり、また晴海や豊海周辺に魅力的な種地を確保できる可能性が高くなってきた今、当初のみなさんの願いであった現在地再整備を検討するのは自然であり、当然のことなのです。知事の英断を期待しまして、私の質問を終わります。