
平成22(2010)年3月4日
伊藤 ゆう(目黒区)
*本文は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干の変更があることがあります。 正確には議事録をご参照ください。
外郭団体改革について
まず、東京都道路整備保全公社について伺います。私は昨年、同公社の杜撰な経営体質について質問し、知事に駐車場部門の民営化を提案しました。知事は「事実を調査してお答えする」と答弁し、早速に包括外部監査が実施され、監査人の意見は駐車場運営について「民間事業者の参入を促すための工夫を検討されたい」との結果でありました。このことは質問者として大変うれしく存じます。
こうした監査報告を受けて、知事に改めて民営化に向けた一年越しの答弁をお願いいたします。●1
次に水道局関係についてお伺いします。
「水は人類共有の資源」なのか、あるいは「世界が奪い合う商品」なのか。限りなく続くと思われていた水資源が、世界人口の急増と急激な都市化とともに枯渇する中、「水は商品である」とする国際的な結論が出され、世界が水の確保と商品化にしのぎを削りはじめました。
特に人口爆発を抱える発展途上国は水の確保に困難さを極め、予算の削減を狙って水道事業の民営化をした結果、国民からは跳ね上がった水道料金に激しい反発を招いています。
他方、日本人は恵まれた地理的環境から、今や水が石油より高価な商品であるとの認識は乏しく、水事業の国際競争力確保に大きな関心を払ってきませんでした。
しかし、民営化問題に苦悩する各国政府が民営化に頼らない確実な料金徴収と漏水防止を模索する昨今、東京都の水道事業が国際舞台に打って出る好機であるといえます。
都は先般、ODAを通じて交流の深いインドなどアジア各国に都の水道事業のノウハウを持ちかけ、これを国際事業化することを発表しました。民ではなく、官による効率経営ノウハウの提供は途上国にとって渡りに船になるニーズの高い事業であると評価できます。
都は今後、国際化事業に向けてどのような取り組みを検討しているのか伺います。●2
さて、水道事業の国際化を目指す都が国際入札に備えてフロント企業に据えようとしているのが都の監理団体「東京都水道サービス株式会社」、通称「TS」です。
商社などと組み、国際入札に参加するとなれば、それだけに監理団体であるTSの企業モラルと体質が厳しく問われて参ります。
そこで、TSの経営体質について触れてまいります。
TSは都から年間約80億円あまりの業務委託を受け、この内、約32億円の事業を民間企業に委託しています。都は自ら民間企業に発注するよりも人件費の安いTSを活用することで、経費の抑制につながるとして、TSの存在意義を主張しているのですが、果たしてTSは水道局の経費抑制に貢献し、国際入札に参加するだけの透明性、公平性、信頼性を備えているのでしょうか。
まず、都から委託を受けてTSが民間企業に発注する「管路診断業務」について触れます。管路診断とは、都内2万5千キロに及ぶ給水管の改修工事を効率的に行うための水道管定期診断業務です。TSは毎年約9億円かけて、民間事業者に指名競争入札方式で発注していますが、少なくても平成12年から20年の9年間、全く同じ5社が受注しており、不可解さが明らかになりました。これに対し都は、信頼できる企業を育成してきた結果として、5社をTSの「協力会社」と位置づけ、事実上の独占契約を容認してきたのです。ここに問題はなかったのでしょうか。
管路診断は「指名競争入札・単価同調方式」という特殊な契約方式を採用しています。通常、競争入札では最も安い金額で応札した会社が仕事を独占する仕組みであるのに対して、単価同調方式は、管路診断する一カ所あたりの単価を入札にかけ、落札業者が決定した時点で、入札に参加した他の会社が落札単価に同調すれば入札5社が仕事を受注できる珍しい仕組みです。さらに各社の仕事量は入札後にTSが決める仕組みになっていますので、仕事量はTS任せということになります。そのため、5社の関心が予定価格ギリギリでの落札と他社より多くの仕事量を配分してもらえるようにTSの顔色を伺うことに向くのは当然のことです。
果たしてこれで競争原理が働くのでしょうか。伺います。●3
この落札率を見たところ昨年の平均落札率は99%でありました。都は99%という落札率に対し、TSの厳しい見積もりによって予定価格が安価に抑えられているためと説明しますが、問題点が三つあります。一つは入札に参入したい企業があってもTSから「協力会社」に指定されない限り参入できないことです。昭和62年のTS設立以来、「協力会社」を5社以外に参加させたことがないのではないでしょうか。伺います。●4
そうだとすれば特定の会社のみが仕事を受注していたことになります。
もう一つの問題点は受注5社の仕事量をTS側が決めていることです。落札企業への仕事量はまず、1位の落札企業に競争性のインセンティブを与えるため、二番目に業務量の多い他社より5%以上の仕事量を多くしたうえで、各社の能力評価等を勘案して決めているといいます。
ところが、過去5年間の各社の仕事量は決まってK社が30%前後、S社が23%前後、N社が21%前後、T社が15%、D社が10%前後と毎年固定化されており、何かの意思が働いているとしか言いようがありません。
実は今から16年前に水道局は水道メーター購入契約の度重なる談合事件において公正取引委員会から「単価同調方式は談合を誘発しやすい仕組み」との指摘を受け、総価契約方式に切り替えた経緯があるのです。にもかかわらずTSにおいて未だに単価同調方式が採用されているのはどういうことでしょうか?発注者が入札後に仕事量を決められる単価・同調方式は発注者であるTSの裁量権を増すばかりで、透明性、公平性を欠く入札方式であると言わざるをえません。これを見直すよう指導すべきと思いますが所見を伺います。●5
最後の問題点は天下りです。管路診断シェア第二位のS社をよく調べたところ、取締役の一人に元水道局の多摩水道対策本部調整部技術指導課長が入っていたことがわかりました。この元都幹部をA氏と呼びます。A氏は都を退職したのち監理団体のTSに再就職し、その後にS社の取締役に収まっていたことが分かりました。TSと協力会社の結びつきが強いことは言うまでもなく、優先受注の見返りと取られてもおかしくない役員就任を局は把握していたのでしょうか。伺います。●6
さらに私は協力会社元役員から重要な証言を得ました。それによれば、「安全性の確保から協力会社を指定することは必要なことだが、仕事量はTSの裁量であり、努力しても変えてもらうことは困難だった。競争性が働かない仕組みがあった」と証言しています。さらに、「協力会社5社の入札担当者を集め、元水道局OBのA氏が各社の入札価格の調整を行っていた」というものでした。これが事実だとすれば元水道局OBによって公正な入札が妨害されたことになります。局はこうした事実関係を把握していたのか伺います。●7
また、把握していなかったとするならば、この質問を情報提供と捉えて事実関係を調べ、公正取引委員会に報告すべきと考えますが所見を伺います。●8
ちなみにこのS社は管路診断以外にもTSから業務委託を受けており、昨年度は3億2千6百万円の業務を受注していた他、平成16年から5年間でみても、毎年2億4千万円から3億2千5百万円の幅でTSの業務委託を受けていたことを述べておきます。また、A氏の前には同じく協力会社のK社に元水道局漏水防止課長のK氏が役員として天下っており、構造的な天下りであったことがうかがえます。
以上のことから協力会社のあり方に大きな問題を感じるところですが、TSの問題はこれに留まりません。協力会社以外の取引会社にも天下りOBがいたのです。
昨年度だけでもTSから3億70万円の業務委託を受けていた会社をA社と呼びます。このA社・代表取締役社長のH氏は元水道局施設部長であり、水道局を退職直後に社長に就任していたことがわかりました。一年間にTSが発注する1割近い仕事を受注している会社の社長に元水道局幹部がおさまっている事実について都はどのように受け止めているのでしょうか。「都と一体となってライフラインを支える」と自己紹介するTSのことですから、「民・民のことは関知しない」では済まされません。所見を伺います。●9
都が定める「職員の民間企業への再就職に関する取扱基準」には次のようにあります。
「職員が民間企業へ再就職する場合には、退職後2年間は在職中の職務に関連する営業活動に従事しないよう職員及び再就職先の民間企業に対し要請するものとする」とあります。
施設部長だったH氏がTSと契約関係にある水道施設の運転管理会社の社長におさまるのは、都が定める基準違反ではないでしょうか?伺います。●10
なお、A社の親会社である株式会社は水道局本体から年間17億6千3百万円の業務委託を受けている企業であることを申し添えておきます。
以上、監理団体TSについて触れましたが、単価契約方式による不透明な契約案件はTSに留まりません。水道局本体においても実に似たような構造が浮かび上がってきましたので、知事に申し述べます。それは水道局発注の「営業所徴収業務」の委託契約です。これは水道メーターをチェックして回る業務を民間企業に任せるもので、年間約45億円の事業ですが、単価契約方式が採用され、少なくても過去5年間、一度の例外を除いて、特定の3社が受注しています。
しかも、各社のシェア率は毎年決まってT社が46%前後、D社が35%前後、J社が15%前後と気持ちが悪いほど固定化されており、業務受注の指定席と言わざるをえません。
そして私の調査の結果、シェア率ナンバーワンのT社の取締役に元水道局東部第二支所・支所長のS氏がいることがわかりました。T社は昨年だけでも都と20億9千6百万円の随意契約を結んだ会社であります。また、S氏の前職の東部第二支所は「営業所徴収業務」のまさに営業所を司る組織であり、職務に直結する企業への天下りとの批判を免れません。
これで水道局本体でも、多くの仕事量を配分してもらっている企業が都OBを受け入れている実態が浮き彫りになったのです。これこそ典型的な天下りの構造ではないでしょうか。
さらに元関係者の証言によれば「TSの取引企業には役員以外にも部長級や一般社員として元水道局職員が入っている可能性がある」ということでした。
この際徹底調査する必要があります。現在、都の基準では、監理団体と一億円以上の特定契約がある企業に限り、都または監理団体OB職員の有無を確認することができる仕組みになっていますが、A社もS社もT社も契約1件当たりの金額が一億円を下回っているなどの理由で適用されません。
知事は行革を果敢に断行され、一定の成果を上げてきました。しかし、水面下では仕事量を引き換えにしたと言われても仕方のない露骨な天下りが横行しているのです。知事はかかる事態にどのように取組まれるおつもりなのでしょうか。私はまず、水道局またはTSと契約関係にある全企業に対し、都やTS・OB職員の有無を一斉調査し、公表するべきだと思いますが、知事に所見を伺います。●11
最後に、天下りは必要悪だという人がいます。都庁職員にも60歳以降の再就職先が必要だという人がいます。しかし、受注見返りとも思われる天下り職員によって、60歳以降の仕事を奪われている都の取引先企業の民間技術者がいることを忘れてはいけないということを申し述べ、質問を終わります。