●平成19(2007)年3月9日
討 論
大西さとる
(おおにし さとる 足立区選出)
*本文は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干の変更があることがあります。正確には議事録をご参照ください。
私は、都議会民主党を代表して、第1号議案「平成19年度東京都一般会計予算」、議員提出議案第1号「老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例」に反対し、他の議案には全て賛成の立場から、討論を行います。
私は奈良県生駒市生まれで、石原知事は兵庫県神戸市生まれ、どちらも江戸っ子ではありませんが、今は東京人として、都政にかかわるものとして、討論させていただきます。
まず、私たちの立場は明確です。東京の名誉を守り、10年後の空虚な夢を語る都政ではなく、今日この場で都民のために献身する都政を復活することです。
そして、私たちのターゲットは明確であります。知事や知事側近の不明朗な海外出張や知事交際費の支出、また、知事のトップダウン事業への子息や知人の関
与、都庁と受発注関係にある業者との宴席など、石原知事と知事側近が歪め、私物化している都政を正し、正常化することであります。
今、東京は五つの孤立から脱却しなければなりません。
その第一は、世界からの孤立であります。
私たちは、代表質問においても、中国や韓国などに対して、時に反発を招き、時に誤解を招きかねない発言を繰り返す石原知事の姿勢を批判してきました。ま
た、石原知事は、近代オリンピックの生みの親・クーベルタン男爵の母国語であり、英語と並ぶIOCの公用語であるフランス語に対して、「ろくに数の勘定が
できないフランス語」などと罵倒しています。さらに加えて、予算特別委員会で、石原知事が北京オリンピックのボイコットに触れていることを質したところ、
知事は、「独裁政権がやったオリンピックというのは、必ず後に事が起こる」と述べ、ムッソリーニやヒトラーを例に出して、「歴史の一つの原理」だと言い
放っています。
これが東京都知事にして、東京五輪招致委員会会長の発言であります。これらの発言が、果たして世界の賛同を得られるのでしょうか。
第二に、全国の自治体からの孤立であります。
私たちは、知事就任以来39回開催された全国知事会議に石原知事が出席されたのは、わずか9回にすぎず、そのうち4回は政府主催による総理大臣、閣僚と
の懇談の席であることをあげ、石原知事の顔は国には向いているが、他府県には向いていないことを指摘しました。会議に出ればよいというものではありません
が、ここに石原知事の基本的姿勢が現れているのです。その結果、全国知事会の会長選考に際しても、多数の支持を集めることができませんでした。今、真の分
権改革を実現するために、他府県の知事と直接会い、それぞれの事情を理解し、積極的に分権改革に向けたイニシアチブを発揮することが求められているので
す。
第三に、都内区市町村からの孤立であります。
先日の「都独自の住民税軽減措置」発表が典型でありますが、この措置は、自治体によっては国保税に跳ね返りが出ますし、徴収実務を行っている区市町村の
事務にも大きな影響が出ます。財政力の弱い自治体はとても同調することはできませんし、仮に同調すると地方交付税交付団体においては、交付金を削減される
ことにもなってしまいます。こうした大きな影響を受ける区市町村を無視した石原知事のトップダウンでは、都内区市町村の真の協力を得ることはできません。
第四に、都庁からの孤立であります。
8年にわたる側近主導の密室行政と公私混同、「事務局がやった」「事務局の責任」という知事発言に代表される都合が悪いときの責任転嫁は、庁内の人材を
枯渇させ職員のモラールを大きく低下させました。「組織の中の人間というものは、他人がどのように報われるかを見て、自らの行動を決める」というドラッ
カーの言葉を進呈しましたが、今や上ばかり向いて泳ぐ「ヒラメの立ち泳ぎ」とまで揶揄されるようになっています。都庁における組織倫理の破壊は、結果とし
て都民に大きな被害を及ぼすことになります。
そして、最後に、都民からの孤立であります。
「これまで高齢者については、一律に“弱者”あるいは“サービスの受け手”としてとらえられがちであったが、これからは、いつまでも人生に対する理想や情熱を持ち、社会の重要な担い手として積極的に役割を果たしながら生活していくことが望まれる」
これは、平成元年11月に、東京都が対応すべき対策や方向を示した「東京の明日『ゆとり型社会』」にもりこまれた一節です。こうした対策の一環として、
高齢者の就職にとどまらず就業全般について新たな分野を開拓するために、今は「しごとセンター」と名を変えた「高年齢者就業センター(シニアワーク東
京)」が設置されたのをはじめ、各種施策が実施されてきました。
石原知事は先の代表質問に対する答弁において、「10年後の東京」における高齢者施策について、「高齢者を、支えられる存在としての画一的なとらえ方で
はなく、もはや本質的に観点を変えまして」と述べられましたが、石原知事の場合は、「本質的に観点を変え」て18年前に戻ってしまっているのです。「社会
を活性化させる存在としての新たな高齢者像」を描き、各種施策を進めてきたのがこの18年間の都政なのです。
このような石原知事に、都政の将来を託すことはできません。
今、都民が真に求めているのは、不安の解消です。オリンピックの招致は、都民の生活に対する不安を一時期忘れさせる効用はあっても、根本的な解決にはなりません。
震災の不安、高齢化への不安、若者の不安、地域の安全への不安、環境の不安など、都民が抱えるさまざまな不安に対して、着実に、しかも、力強く取り組んでいくことが求められているのです。
これらの孤立の結果、平成19年度予算案は、私たちが繰り返し求めてきた震災対策の強化や雇用格差の是正、子育て支援などに極めて不十分であり、高齢社会対策においても、危機感が見られません。よって、第1号議案「平成19年度東京都一般会計予算」に反対するものです。
さて、先の予算特別委員会の自民党の討論において、民主党の予算案への対応について一言ありましたが、「我々としては正直に申し上げて驚きを禁じえないと
ころであります」。そうおっしゃるのであれば、例えば、昭和52年度予算案の審査において、都議会自由民主党がとられた対応は何だったのでしょうか。速記
録にはこう記載されています。「我が党は第1号議案に反対し、その他の議案については賛成するものである」。そして、組み替え案は提案しておりません。こ
れが批判されるべきものであるならば、都議会自由民主党こそ、まず自らの行動を省みて、どのような立場で民主党を批判するのか。
私たちは、何もかも反対などという幼稚な態度をとるのではなく、反対するに至った予算案の主要な問題点については、先の討論において明確に述べていま
す。更に、賛成しているものを反対しているかのごとく言い、一般会計と特別会計、基金設置条例をごちゃ混ぜにしてしまう発言を聞いていますと、一体どこの
政党が言っているのかと、耳を疑うほどであります。
また、自民党が、予算特別委員会の討論で述べたように「責任政党としての役割をまっとうしていく決意」であるならば、なぜ、自ら問責し、更迭させた浜渦前副知事の参与就任、石原知事の公私混同・都政私物化を黙認するのでしょうか。
今議会に臨む段階では、わが会派の賛否の態度は未決定でありました。莫大な予算と17万職員の人事権を握る都知事のポストに座る人に望まれる資質は、「権
力に対する謙虚さ」であります。しかし、審議を通じて、知事が見せた態度は、さまざまな批判に対する責任転嫁と傲慢な姿勢のみでありました。
半年かけて、庁内外の政策関係者や多くの都民・団体の声をくみ上げながら、一生懸命作り上げた予算に反対で臨まざるを得ないことは、我々にとっても苦渋
の決断であります。そのことを都民の皆さま、都庁の職員及び関係者に申し上げ、最後に、私たち都議会民主党は、名誉ある東京を取り戻すべく、一致団結して
取り組んでいく決意を表明し、討論を終わります。